―塔矢アキラお誕生日部屋―

12月に入ったので、14日の新作まで、過去作品を順次アップして行きます。





― コンビニラバーズ ―
(前編)
【2005年度作品】







「ち〜っす!塔矢、これ土産。」
「え?これって……。」
「俺、お昼まだなんだ。今日はスッゲ〜さみ〜からさぁ……来る途中寄ったコンビニでつい……。」
「あ、このコンビニ、最近開店したところだね。この辺にも出来て便利になったなぁと思ったんだ。」
「もう行った?」
「いや、まだ。」
「あ、じゃあ、これ一緒に喰おう。ここの、一番美味いの。俺が保証するぜ。」
「うわぁ……あったかいね、まだ。器が熱い。」
「そらあ、今までアツアツの汁に浸かってたんだから……って、もしかしてお前……喰ったことねーのっ!?」
「馬鹿なっ!おでんくらい食べたことあるっ!いや、むしろ好きだっ!」
「……おま、そうじゃなくて……コンビニのおでんってことだよ。」



絶句した塔矢を見て―――

そうか、コイツ、コンビニおでん、生まれて初めて……と、俺は妙に嬉しくなる。



「どう?美味いだろ?汁も啜ってみろよ。」
「うん……確かに予想よりも美味しい。おでんって、こんなに美味しかったんだ……。」
「……それ、CMのパクリ?」
「は?パク?」
「やや、もういいから。お前んちテレビつけないもんな。」
「君の分、結構いただいてしまったな。済まない。」
「いいのいいの。買い過ぎだったかなって思ってたし。……なあ、お前何が一番好き?おでんのネタ。」
「え?そうだなぁ……やっぱり昆布かな?」
「昆布〜〜〜っ!?マジかよ、おでんって言ったら卵と練りもの系だろうがっ!」
「え、そう?昆布だって美味しいじゃないか。うちで作る時も、たっぷりと入れてもらうけど?」
「わかった……お前のその真っ黒い髪は、昆布のお陰なんだな……。」
「は?何か言ったか?」
「や〜、別に……。他には?好きなネタ。」
「そうだな、味の染みたお大根も好きだよ。」
「お大根……大根に『お』をつける十六歳男子は世界中でお前だけだ……。」
「は……また何か言ったか?」
「そういや、お前もうすぐ誕生日だろ?何か欲しいもん、ある?」
「まさか君、プレゼントくれる気か?」
「や?や〜、ちょっと聞いてみただけ……。」
「じゃあ、またおでんでいいよ。ここの、美味しかった。」
「おでん〜?誕生日のプレゼントが?本気か?……お前って欲がないっつか、変わりもんっつか……。」
「だって、おでんには漏れなく君がついて来るんだろう?僕にとっては君がメインだから。」
「……は?お前……まさか俺を、く、喰っちゃう、気……。」
「くくく……なんだ、その青ざめた顔はっ!はっはっは……君と一日中打てれば、それが僕には最高の誕生日プレゼントだってことだ。ついでにおでんもあれば言うことない。十分だよっ!」



何気に「殺し文句」を言う、そのタチの悪いクセ……
いい加減に止めて欲しいと、俺は真剣に頭を抱えた。

塔矢を落とせるなら、コンビニ中のおでんくらい買い占めてもいいのになぁ……なんて。
そんなことを思いながら、俺は最後の最後に残した、大好物の卵に喰い付いた。

味が染みて色の変わった卵は、本当に美味い。
何個でも喰えそう……でも、最後の最後に一個だけ喰うのがいいんだな。



「あ、君も卵が最後だね。ふふ、僕もだよ。子供の時たくさん食べ過ぎて胸につかえちゃってね。ほら、パサパサするから、黄身が。それから最後に一個だけにしなさいって言われたんだ。」
「へぇ……お前でも急いで食べて咽喉につっかえたりするんだ!」
「だって美味しいじゃないか?」

ニコッ……と笑った塔矢は無邪気そのもので、罪作りなくらいに俺の胸に染みた。








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果たして進藤は、本当におでんを携えてやって来た―――僕の誕生日に……



「ほい、誕生日おめでと。これ、リクエスト通りおでん。どうする?先におでん喰う?それとも、メインの俺との一局からいく?」
「ははは……ちゃんと覚えていてくれたんだ!」
「忘れるかよ、てめえ……そんなアホな誕生日プレゼントリクエストするのは、お前だけだって。」
「ア、アホとか言うなっ!失礼だな、君は……誕生日の人間に向かってそんなことを言うとは。」
「ひゃ〜、偉そうにしてんな……って、お前はいつかもか。あははっ!」
「さっさと打つぞ!もう夕方近いじゃないか、君を帰すのが遅くなったらいけないし。」
「え、俺、今夜泊まりでもいい?明日休みなんだ……って、もう用意して来ちゃった。」
「あ、そう……じゃあ、そうするといいよ。」



どうして彼はこんなに無頓着なのだろう。

僕は進藤と久しぶりに時間を気にしないで打てる喜びと、それとは裏腹にある、一晩彼と過ごす苦しさと。

そうか……板ばさみの夜を久しぶりに過ごすことになるのかと、複雑な気分になった。



「どう?あそこのおでん、全種類を買ったんだぜ〜、俺が買い占めたせいで終わりになっちまったネタもあってさ……へへ。」
「確かに面白いなぁ……軟骨入りのつくねってコレ?わぁ……。」
「その容器のへこんだトコにさ、辛子を乗っけるんだ。便利だろ。……あ、お前は辛子とか駄目だっけ?」
「いや、おでんだったら少しは…こんにゃくとか味の染みにくいものにはパンチが効いていいよね。」
「へ〜、お前って素材の味が大事!とか言っちゃって辛子なんて邪道だーっとか言いそうなのに。」
「そんなこと言わないよ、君って僕に対してちょっとそういう思い込みが多くないか?」
「そっかぁ……そうなのかな?俺、お前のことあんまりわかってねーのかな?」



一局打ったら結構な時間になり、すっかりお腹のすいた僕たちは、進藤が大量に持って来てくれたおでんを温め直して食べた。

土鍋に移して温めたおでんは、味がこれでもかこれでもかと染みていて、美味しい。



「このちくわぶ、大きいね……うちでは余り入れないから。」
「そう?モチモチしたとこが美味いんだから、ガブッていけよ……って、わわーーーっ!!お前、何してんだよっ!?ちくわぶ、箸で切るヤツがあるかっ!!」
「はぁ〜?君こそ何を大騒ぎしてるんだ?箸で切ったらいけないのか?そういうルールでもあるのか?味が落ちるのか?」
「い、いや、そういう訳じゃねーけど……だってお前がそういうのにかぶりつくトコ、見てみたかった……。」
「また訳がわからない……どうしてそういうトコを見たいんだ?」
「だって何か新鮮じゃ〜ん!上手く撮れたら待ち受けにしようかと思ってたのにさっ!」
「撮れたらって……何で僕がちくわぶにかぶりついてるトコを写真に撮るんだっ!下らないこと言うなっ!考えるなっ!!」
「ちぇ〜、ケチ……。」
「これ以上言うならもう食べないぞっ!……き、君の前では……。」

僕が食べる様子をじーっと見る進藤なんて、大嫌いだ。
ましてや写真になんか撮らせるものか……絶対に、撮らせるものか……



どうして。
どうしてそんなに僕に興味がある風を装う?

僕に興味があるのか?本当に?

からかっているだけじゃないのか……



「あ、俺も昆布喰ったらさ、お前みたいに髪がツヤッツヤになるかな?お前の髪っていいよな〜、触りたくなる。」



また。
またそういう際どいことを言う。



―――いいよ、触ってごらん……好きなだけ……



そう言ったら。
一体君は、どういう顔をするんだろう……








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眠れない。

おでんをたらふく喰って。
もう腹いっぱいだけど残すのが悔しいからさ、意地になって喰って。
それで、スゲー眠くなった。
何とか風呂には入って、塔矢が敷いてくれた布団に潜り込んだらあっという間に寝入ったらしい。



ふと気が付くと、真夜中。
隣には誰もいない。……塔矢は自分の部屋に寝ちゃったんだな。
北斗杯の合宿の時は、いつもこうだった。だから自然なのはわかるけど。

一緒に寝たいな……寝ている塔矢を見てみたい……



―――おでんを喰ってる塔矢は、子供っぽくて可愛かった。

箸で練りもの切るの見た時は、オマイガッ!だったけど。
まるで「箸遣い王選手権」とかあったら、優勝しそうに箸遣いが上手い。この歳でお前、ジジイかよ?と突っ込みたくなるくらいに、上手い。
汁を飛ばしたり、ツルンと滑ったりしないで、器用に切っていた。ちくわぶも、ごぼ天も、はんぺんも!

参ったな……ちょこっとばかりやましいことを考えないでもなかった俺としては(だって〜、ああいう形のものをだな、塔矢が頬ばっているとだな、変な妄想がだな……)残念でもあったけど。



いつまでだろう。
こんな風に、俺がこの家に泊まっていけるのは。

同じ屋根の下に塔矢が寝てると思うだけで、急に息苦しくなる。



夜はやっぱり駄目だな。
辺りが静かになって、自分の気持ちだけに意識が集まる。
塔矢が好きだという気持ち―――それはいつの間にか、友情を超えた好きに姿を変えて俺を慌てさせた。



ちぇーっ……やっぱ眠れなくなっちゃった。

いっそ夜這いでもするかっ!
誕生日にんなことしたら、思いっきりボコられるな、間違いねえ……

でもそしたら、却って諦めもついていいかも。
今だったらそんなおバカなことをしても、塔矢には若気の至りということで、いずれは怒りも解いてくれてまた普通の友達くらいには戻れるかもしれない。
そんくらいの内に、さっさと玉砕覚悟で告るのもいいかも……



いや、駄目だ。
今塔矢に迫っちまって拒否られて……
死ぬ。そんなことになったら、俺、マジで死にそうだよ……








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眠れない。
おでんを食べ過ぎて一度はツラツラと眠くなった。
進藤があっという間に寝息をたて始めたのを見て、その締りのない寝顔を見て。



凄く、切なくなった……



いつまで僕は、こんな風にただ君の寝顔を見るだけで我慢出来るだろう?
いつかこのほっぺに指を滑らせてしまうような気がして、自分が怖い。

君のほっぺ……
まるでさっき食べたはんぺんみたいだな。押すと弾力があってプニプニしてそうだ。
まだ、てんで幼い。
僕と同い年だなんて信じられない。
いや、正確には今日から同い年になったんだな、僕らは。



十七歳の誕生日を君と過ごせて良かった。
ケーキもプレゼントもいらない。
君がいて、一緒に打てて、君が僕の為に買って来てくれたおでんを(それが例えコンビニのでも!)食べただけで、僕には本当に十分だった。
以前君に告げた僕の言葉に、嘘偽りはないのだ。

十八歳はわからない。
十九歳ならもっとわからない。
僕らの未来がどうなるかなんて、誰にもわからない。
一つだけ言えることは、ただ碁を打つことはお互い止めないだろうということだ。

それは。
僕らが永遠に離れることもなければ。
離れたいと思っても離れられないということも表わしている。



入れ替わり立ち代り、甘さと苦さが襲って来る。
君と一緒にいて、思わせぶりなことを言ったり言われたりする時の、もどかしさやじれったさに似ている。









お水でも飲もうと、僕は部屋を出る。
ふと、灯りが漏れているのが見えて、進藤が寝ている筈の座敷を覗った。

障子が少しだけ開いているので覗いてみると、そこに進藤の姿はなかった。
急いで布団をめくる。触れてみるとまだ温かかった。

トイレかなと思って行ってみるがそうではない。
玄関まで行ってみて、そこに彼の靴がないことに気付き、僕は家を飛び出した。



月も出ていない真夜中。
いや、もう明け方に近いのかも。

寝静まった街の暗闇に浮かび上がった、コンビニの灯り。静かに僕を誘っていた。
そして。
窓の向こうに、進藤がいた。

彼は、雑誌コーナーをウロウロと物色しているようだ。
ガラスの向こう。
やがて僕に気が付いた進藤がビックリした顔をして、それから少しだけ呆れたような笑顔を見せた。

……入って来いよ。

進藤が口を尖らせてそう動かしたのが、窓越しに見えた。



「やぁ……ちょっと眠れなくなって。いつも俺って夜更かしだからさ、早く寝ちゃうと目が覚めちゃうのも早くなって。もうすぐ夜明けかな?」

僕が何故ここまで来たのか、特に訊きもせずにヘラヘラと話す進藤。
彼は僕の家から黙って帰るつもりではなかったのだ。
それが証拠に、彼はデイパックを持っていない。財布だけ掴んでここまで来たらしい。

僕は軽装で走って来た自分が、急に恥ずかしくなった。

「なあ、お前薄着だから早く帰れ。俺、何か朝飯になるもん買って帰るから。」
「大丈夫だよ。僕も一緒に帰る。」
「いいから帰れ、俺のジャケット貸すから。」
「嫌だ。勝手に決めるな。君と一緒に帰る。」
「……ふぅ……わかった。俺、雑誌と食べるもん買うからそこで待ってて。」

進藤が困り顔をしたことに、静かに傷付いた。








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「お前、これも喰ったことねぇ?熱いぞ〜、まだ。」
「何、それ。」
「肉まん!ほら、胸んとこに入れてみ。こうやって二つ入れると巨乳みたいだろ〜、しかもカイロ代わりにもなる優れもんだぜ。」
「よく恥ずかしくないな……そんなところに肉まん入れて……食べ物で遊ぶな。」
「うひ〜、あったかいぜ!こりゃあいいや。見て見て塔矢〜、これって何カップくらいだろ〜。」
「もう……き、君って……っく……くくくっ!はっはっはっはっ!下らなさ過ぎて……な、涙が出そうだっ!」
「笑ってねーで、お前も胸に入れて抱えろよ。あったかいぜ〜。」
「僕がっ!?」
「ほれほれ、そのコートの前、開けろよ。肉まん入れてやるからさ〜。一個ずつ袋に入れてあるから汚れないって。」
「あっ!こら、止せ、進藤っ!勝手にそんな……。」
「おい、暴れんなよっ!塔矢……ぎゃっ!!」
「わわーっ!あぶな……しんどっ!」

揉み合っているうちに、塔矢のコートの襟を掴んだ俺の体ごと、引き倒された。
塔矢は壁に打ち付けられ、俺はその上に被さる格好になる。



……ぐにょ。



え……ぐにょ?



そう、まさにぐにょ……という感触だった。
それは、塔矢と俺の重なり合った胸の間で潰された肉まんの感触だとすぐに気が付いたけど。

凍りついた俺たちは、暫くの間動けなかった。……声すらも、出せなかった。



「……塔矢、俺、ちょっと女の子の気分、わかったかも。胸が潰されるのって気色ワリイな……はは……。」
「馬鹿なこと言ってないで……は、離れろ……。」



そうだった。
俺は必死でこの状況を和ませようと、明るい声をだしたつもりだったけど。
塔矢を壁に押し付けたままなのは変わらない。

コンビニの袋を持った俺の左手は、塔矢の肩越しに壁を押して支えている。
塔矢の胸に肉まんを入れようといたずらしていた右手は、アイツの左肩に乗っかっていた。



ヤベ……
この距離は絶対的にヤバイ。

俺が心の中で呟いた時は、既に遅かった……








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夜明けが近い。
遠くから、光りが歩み寄って来るような時間。

まだ薄暗いけれど、進藤の顔が凄く近くにあって、その瞳が潤んでいるのが見えた。



綺麗だ……
薄茶色の瞳はガラス球みたいにキラキラしていて、今にも泣き出しそう……

それが僕と触れ合っているせいではなく、ただ単に、寒さが厳しいせいだとしても。

こんな綺麗な瞳に見詰められていることが、叫び出したいほど嬉しくもあり、同時にいたたまれなくもあり……

急に、心臓がドキドキと駆け出した。
僕らの間には潰れた肉まんというふざけたものがあって、きっと僕の動悸を隠してくれているだろう。



「塔矢……こうやってるとあったけーな……。」
「しん……。」



掠れた声が降って来た。

進藤の目がゆっくりと伏せられて、吐き出された白い息が僕の顔にかかる。

進藤の全身が、更に密着して来た……ような気がした。胸が圧迫される。

鼻の頭が冷たさに真っ赤になっているのまで、はっきりと見えた。



「あったかいって……肉まんがか?」
「はぁ?肉まんって……馬鹿はお前だろう……こやってくっ付いているとあったかいって思わねーの?」
「で、も……い、いつまでこうしてるんだ……いくらあったかくても、これじゃ帰れない……人にも見られる……。」
「待って。じゃあもう少し。もう少しだけくっ付いてていい?あとちょっと……。」



―――抱き締められたのだと、わかった。

くっ付いて温め合うという可愛い状態なんかじゃない。

進藤の腕は袋を持ったままで器用に僕を包み込み、頭は僕の耳に擦り付けられた。

彼の冷え切った髪の毛が、僕の耳を、うなじを、頬をくすぐる。

……震えが起きる。



ああぁ……

声が。
声が漏れそうになる……

驚きでも苦しさでもなく、溢れ出す興奮が体を突き破って飛び出して来そうだ!



とうとう僕も我慢出来なくなって、彼の背中に腕を回そうと身じろぎした時。

モソモソと違和感を感じたと思ったら、進藤があ……と、声を上げた。
続いて僕らの足元に、何かが落ちたのがわかった。



「……落っこっちゃった……へへへ……。」



そろーっと目をやると。
確かに地面には、僕らの間でぺしゃんこになった肉まんの袋が二つ、転がっていた。








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最悪のタイミングっつーのは、ああいうことを言うんだろう。

塔矢を離すのは嫌だったけど、仕方なく俺はしゃがんでジャケットから滑り落ちた肉まんを拾った。
それから恐る恐る見上げた塔矢は、最初は複雑そうな顔で頬をプルプルさせてたけど、すぐに笑い出した。
笑いを堪えてたんだ。

一度爆発した塔矢は、可笑しくて可笑しくて笑いが止まらないみたいだった。



ちぇ〜……折角いい雰囲気だったのに。









結局。
俺たちは家に帰って、潰れて煎餅みたいになった肉まんとお茶とで早めの朝ご飯を食べた。

「え……お前、まさかコンビニの肉まんも初めて食ったの……。」
「中華街のお土産なんかではいただくけど。コンビニのは初めてかもしれない……。へえ、カレーまんとかピザまんなんかもあるのか?面白いな。」
「中華街〜?本場物じゃなくて、こういう潰しちゃったら簡単にぺしゃんこになるジャンクな肉まんがいいんだよ。如何にもコンビニおやつって感じでさ。」
「うん、味はイケるよ。潰れてても。ふふ……。」
「おでんの時も似たようなこと言ってたな……おい、塔矢!白状しろ!お前、コンビニ自体にほとんど行ったことねーんだろ?」
「え、ええ?……んーもぐもぐ……。」
「よっしゃ、今度俺がツアー組んでやる!お前みたいになーん知らないヤツにとっちゃ、楽しいとこかもしれないぜ?」
「……僕のことを小馬鹿にしてるだろう?」
「そういうんじゃねーよっ!ひねくれモンだな、全く……声まで小さくなりやがって。……あのさ……俺がお前と行きたいだけ。それならいいだろ?」
「行きたいって……。」
「だーから……お前と一緒にいたいだけって……別にどこでもいいんだって……もうわかれよ、いい加減……。」

ニブイんだから……
さっきあんなにぎゅうって抱き締めたのに。

……いや、まあ、肉まん越しではあったけど、さ。



最初はポカン……としていた塔矢が、不意に口元を歪めた。

あれ?

まさか……

お前、顔が赤い?


「そう、か……わかったよ。お、茶、煎れ直すね。……っ!……っと。」

立ち上がった塔矢は、その場で足をもつれさせて転びそうになってた。



……う、わぁ〜〜〜っ!
コイツ、照れてるっ!!照れてるんだなっ!?

赤い顔してしどろもどろになってる!ぎくしゃくしてる……



か、可愛い……めちゃくちゃ可愛いじゃんかっ!?
ドキドキするくらい……抱き締めてキスしたいくらい、可愛い……



これって脈ありってことなのかな。
単に鈍いだけで、余り状況とか俺の本音とかわかってないのかな。




取りあえず。
今は俺の為にお茶を煎れてくれる塔矢を背中から抱き締めて。

おでんより肉まんよりお前を喰っちゃいたいって、オヤジ臭いセリフを囁いてみようかどうか、俺は迷っていた……













(大人仕様は裏ページからどうぞ^^;)



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