― 面影 ―







「あのさ…俺、いつか訊こう訊こうって思ってたんだけど…。」

ヒカルのおずおずした声に、アキラははっとなる。ついに来たか…と身構えた。

「…いや、やっぱりいいや。」

ヒカルは頭をぶん…と振り、小さな溜め息をついた。
ほっとする気持ちと物足りない気持ちと、半々のようで。アキラもどうしていいかわからない。
無意識に、髪に手がいった。落ちた髪をそっと耳にかける。
その様子をヒカルの視線が追っていることを、アキラも痛いほどわかっているのだった。



今夜は二人で存分に打った。塔矢邸の縁側で。
庭のハナミズキが、清らかな白い花を咲かせている。清々しい夜の香りがする。
最近では忙しくてなかなかプライベートな時間を合わせられなくなっていたから、今夜はヒカルもアキラも言葉にこそしないが待ち侘びていた時間だった。

「もう一局どうする?」
「ん〜、出来たら休憩したいかな。咽喉も渇いたしビールなんて…駄目か?」
「いいよ、冷蔵庫にあると思う。でも飲んだら打たないよ、僕は。」
「うん、わかってるって!散々打ったから今日はもういいや〜。」
「じゃあ取って来る。ついでに何か乾きものでも見繕ってくるよ。」
「サンキュー。」

終局すると途端に重たくなる空気を持て余していたアキラは、ほっとして席を立つ。

チラと時計を見ると、終電が出る頃だ。
アキラはヒカルに声を掛けようかどうか一瞬躊躇い…そのまま黙って台所に向かった。



そして二人はそこそこに酔っ払った。
アキラは環境もあってか早いうちに酒の味を覚え、意外にも強かった。
ヒカルの方は陽気なことが好きなたちだから飲みっぷりはいいのだが、実は強くない。気分が悪くなったり、人に絡んだりもない訳ではなかった。

酒に対する強さというものは不思議だ。多少鍛えられるとかはあるにしても、基本的なレベレというか体の反応は最初から決まっているのかもしれない。
そしてそれは、実際アルコールを体に入れてみるまでわからない。大なり小なりの遺伝はあるのだろうが、飲んでみて初めて強いか弱いかわかる。

アキラはヒカルがそんなに強くないと知っていたが、ビールくらいで正体を失くすほど酔うとは思っていなかった。だから気温が上がって初夏らしい晩だということもあり、二人は冷えたビールを早いピッチで飲み続けたのだった。

「進藤、もう電車ないから泊まって行くだろう?」

返事はない。
縁側からすぐの畳に布団を敷いた。どうせ両親もいないし、どこに進藤を寝せてもいいだろうと、それはアキラの気遣いだった。
アキラの方も多少フワフワとした心地だが、大した酔いではない。シャワーくらいは浴びられるだろう。
ヒカルを置いて浴びて戻って来てみると、ヒカルはかけ布団の上に寝そべっていた。

「進藤?寝るんなら、ちゃんと布団の中へ入れ。軽い夏布団だから。」

やっぱり返事はなかった。
灯りをしぼって縁側の窓を閉め、そしてアキラはヒカルへとゆっくり近付いた。膝をついて、覗き込む。

「…髪、洗ったの?いい匂い…。」

寝ていると思ったヒカルがパチ…と目を開け、アキラの髪に触れた。
洗い髪のままのアキラは声をあげんばかりに驚いたが、突然のことにヒカルの手を振り払うことが出来ない。動けない。

「わあぁ…ツルツルしてる…あ、濡れてるからか…黒髪って、こんなに綺麗なんだなぁ…真っ直ぐで…流れるみたいで…。」

まだ酔っているのか?と、声を掛けたい。掛けたいのに、咽喉が凍りついたみたいに声が出なかった。

「ねえ、もっと触りたい…触らせて…ずっと、見てた…長い、黒髪…触りたかった…。」

ヒカルの声は甘ったるく、湿り気を帯びている。アキラは、その声音に呪文でもかけられたかのように固まってしまった。

ヒカルがアキラの肩をぐっと引寄せた。無防備だったアキラの体は呆気なく布団に転がされ、ヒカルに圧し掛かられる。
あっ…と声を上げはしたものの、すぐに吸い込まれてしまった―――ヒカルの唇に。その口内に。

鼻からの呼気に、アルコールの匂いがしっかりと混じっている。
抵抗しようにも下になっているアキラは、酔っ払いの体重に阻まれてどうしようもない。
そうするうちに入り込んだ舌先がアキラの口内まで酔わせるように、激しく、甘く、辿っていくのだった。

まるでヒカルの酔いの深さの分だけ、自分も同じように酔わされていくみたいだ…二人の間で均衡をはかるかのように、ヒカルの過ぎたアルコールが流れ込んで来る…

その合間も、ヒカルの手はひっきりなしにアキラの髪に触れていた。
表面を撫でたり、指を差し込んですくようにもされた。その手付きは愛情深く、心がこもっているようで、とても酔った上での戯れとは思えなかった。

…いや、アキラにしてみれば願望もあったのかもしれない。
その時のヒカルの口付けも、髪への愛撫に近い触れ方も、全てが意味のあることだと思いたかったのだ。

だから。
アキラは一切の抵抗を止めた。ヒカルのしたいようにさせた。そして、自分も応えた。積極的に舌を絡ませ、柔らかく吸い、唾液を飲み込んだ。鼻から抜ける二人分の喘ぎ声に、耳を犯される。

まだ、ヒカルはアキラの髪を愛しげに撫で付けている。
いっそ…いっそこのまま時間が止まってしまえばいいのに…と、アキラがうっとりと思い始めた時だった。

「…った!…っ―――…。」
「えっ、あ、っ………。」

アキラの髪を下敷きにするようにヒカルの腕が乗っかり、体が動いた拍子に引っ張られた。痛みが走って、思わず声が出たのだ。

そこでヒカルは身を起こし、そして目を見開いた。
人が我に返る瞬間とはこういう様子なのだと、アキラは目の当たりにする。
同時に、アキラの心も急速に凍りつき始める…

「塔矢…お、俺…。」
「進藤?」

その時ヒカルの中に巻き起こった混乱の嵐が、アキラにわかる筈もない。ただ、その瞳が戸惑いの色から、次第に嫌悪の色へと移っていったように感じられたのだ。

…ああぁ…進藤は間違いを犯したのだ。彼は僕が相手だとわかっていなかったのか…

青ざめていた顔は、すぐに真っ赤に染まった。口を拭うような仕草までして見せた。

「俺…あの、俺さ、っと…えっと…。」

もう一歩、ヒカルはアキラの上から退いた。
眼前のアキラは布団の上に黒髪を散らし、黙ってヒカルを見上げている。
その沈黙がヒカルを責め苛んでいるように思えたのか…ヒカルの中の何かが切れた。

「お前がっ…お前が悪いんだっ!そんなナゲエ髪してっから!―――女と間違うじゃんかっ!」

怒鳴り声が、アキラに降って来る。
アキラはさっきと同じように、自らの髪に手を伸ばしてしまっていた。

「そうだ…お前に訊きたかった…どうして?お前、どうして髪を伸ばしてんだよ?もう、おかっぱなんかじゃねえ…肩を通り越して、完全なロン毛じゃんか…。」
「だから?だから―――女性と間違ったって、そう言いたいのか?」

ヒカルの残酷な言葉に、僅かながら力を得た気がする。



…そうだ。僕は髪を伸ばしている。意識して、そうしている。
誰のためだって?誰に見せたいかって?
そんなの。
そんなの世界中でたった一人の人間に向けてだって決まっているじゃないか―――!!



しかし、アキラはそれを口にはしなかった。
ヒカルを爛々と睨みつけ、その胸倉を押した。肘をついて上半身を起す。ヒカルも完全にアキラから離れた。

アキラの髪はまだ濡れており、一部が頬に、額に、乱れた状態で張り付いてる。
見ようによっては男とは思えない…いや、男だからこそ滲む色気のようなものがあった。

「わっかんねえ…急に髪を伸ばして何がしたいんだよ…お前のせいだ…そんな髪にしやがるから…俺は…だから…。」

言いながらヒカルはヨロヨロと立ち上がり、入り口へと向かった。

まさかこんな状態で帰るのか…酔っ払っているからじゃない…僕にこんなことをしておいて…そのまま置き去りにして…

そう叫び出したい気持ちはあるのに、アキラにはヒカルの言動の数々が堪えていた。相手がヒカルだけに、心底打ちのめされる。全身から力が奪われる…

髪を伸ばしていること自体、まるでヒカルの関心を引いてるような、媚びてでもいるような、そんな後ろめたさを感じて―――

ずっと切れなかったのは、一旦伸ばし出したら何故だかヒカルにそれを認められるまで切りたくないという、頑なな気持ちが己の中に居座ってしまったからだった。

アキラも混乱していた。
髪を伸ばしていることに気付いて欲しいと思いながらも、いざ、その日が来ると、一体自分はヒカルに何を言われたくて、何と思われてそうしていたのか―――自分で自分の心がわからなくなってしまう。

呆然としていたが、ヒカルが部屋を出て行ったのだけは気配でわかった。















…もう、どうだって良かった。
ほんの数分前までアキラの髪に触れ、唇を交わした相手はさよならも言わずに去ってしまったではないか。
残されたアキラは布団の上にまたゴロン…と横になり、天井を見詰めた。

―――切ろう。
こんな髪、切ってしまおう。

ちょっとした気まぐれだったということにしてしまおう。
君の言葉が胸に引っ掛かり、それが僕をこんな風にしてしまったなんて…絶対に教えるもんか!

そう思い切ってしまうとスッキリしたのか、アキラは立ち上がり、部屋からハサミを持ち出した。

「あ、そうだ…髪も濡れたままだから丁度いいな…はは…。」

気のない、笑いとも言えない笑いが漏れた。
そして洗面所へ入ろうとして…そこに人がいるのにやっと気付いた。

「え…進藤?」
「ああ、ご免…勝手に借りた。水ぶっ掛けて、頭冷やしてた。」
「帰ったんじゃなかったのか…。」
「帰った?バカ言えっ!俺が逃げる訳ねえだろ―――」

ヒカルのきっぱりとした声が部屋中に反響し、アキラの心を揺らした。

…そう言えば玄関の開く音をちゃんと耳にしていなかったかも、とアキラがぼんやり思った時、ヒカルの方が悲鳴に近い声をあげた。

「塔矢っ!?ハサミッ!まさかお前…。」

アキラは驚きのあまりハサミを取り落としそうになったが、すぐにヒカルの手が伸びた。

「何やってんだっ!?こっちによこせ。」
「何でだっ!関係ないだろうっ!僕が僕の髪をどうしようと、君の知ったことじゃない…。」
「知ったことだよっ!関係、大アリなんだってばっ!」
「は、なせ…これから丸刈りにでも何でも…僕のいいようにするんだから…。」
「まっ…丸刈りぃっ!!??」

わざと大袈裟に言ったのが、ヒカルには効いたらしい。
こんなことを言うのは大人気ないとわかっていながら、アキラはヒカルの前だと自分を制御出来なくてどんどん子どもに返る。
自分で自分が嫌だと思っても、ヒカルの傍から離れられない。自分を唯一縛る人間だとわかっていても、それでもいいからと思ってしまう。

「止してくれよぉ、塔矢…丸刈りなんて…冗談でも口にすんな…。」

心臓が停まるかと思った…お前、俺を殺す気か―――

ヒカルの泣きそうな声の方こそ、アキラの心をギュッと掴んで締め付けたのだ。



ちゃんと話そう、今の丸刈り発言で酔いもすっかりさめたからとヒカルに促され、アキラも部屋へと戻った。
月明かりの差し込む部屋には、まだ乱れたままの布団がある。
そこを迂回して、二人はまた縁側へと出た。昼間は日差しも強かったとは言え、夜の空気はさすがに冷たい。

「さっき訊きたかったのも、その髪のことだよ…。」
「……。」
「教えてくれるか?ホントのとこ。お前がおかっぱよりももっと長くしてるの…まさかと思うけど、俺と関係ある?」
「あるよ。信じられないかもしれないけど…あるんだ。」

言ってしまうと、重たい荷を降ろしたように心は楽になった。
深呼吸をひとつしてから…アキラは語り出す。

「…いつの頃からか気付いていたんだ。君が髪の長い男性に…真っ直ぐな黒髪の男性に目を奪われること…。」
「そうかな?俺が?」
「とぼけているか?それとも自分で気付いていない?…まあ、それはいい。僕が気になったのは女性ではなく男性の時、君が大きく反応することだ。」

ヒカルの返事を待たずに、アキラは続けた。

「はっきりしたのは、書道家の森川さんと一緒になった時だ。」
「森川さん?ロン毛じゃねえだろ?」
「森川さんの書を拝見しただろう。アトリエに招待されて、あの人の作品を…。」
「ああ、確かに…。」

森川とはアマの高段者で、本業は書道家だった。塔矢門下と親しく、ヒカルも何度か会っている。

「あの時、君は森川さんの息子さんと親しげに話していただろう。嬉しそうだった。あの息子さん、男性にしては華奢で綺麗な面差しで…君は何度も、あの人の長い髪を見ていた。どうして髪を伸ばしているかとか、手入れは大変じゃないのかとか、たくさん質問して。」
「ああ、そうそう…確か、バンドやってるんだ。それに芸術家は髪が長い方がインスピレーションが湧いていいとか何とか、色々面白い話をしてくれてさ…。」

そこでヒカルは思い当たるふしがあったらしい。はっと息を飲んで、言葉を途切れさせた。

「君はその時、誰かと森川さんの息子さんを間違えそうになって―――違う名前を呼んだ。長い黒髪の、その後姿に向かって。」
「…お前、聞いたの?その名前…。」

ヒカルの声は、隠しようもなく震えている。
それを聞いたアキラは、不意に自分がヒカルを追い込んでいるような気がして戸惑った。



…違う。
そうじゃない。
進藤を苦しめて仕返ししたいとか、衝撃を与えて振り向かせたいとか、そんなことが望みじゃないんだ。

アキラは口をつぐんだ。
ヒカルにしてみれば、それはひどく長い沈黙に感じられただろう…



「―――いや、ちゃんとは聞こえなかった。でも、君がはっきりとシマッタ…という顔をしたから、誰かと間違えて呼んだんだってことだけはわかった。」

ヒカルの頬が緩んだ。

「そうか…。」

ヒカルがそれを信じたかどうかアキラにはわからなかったが、どちらにしてもアキラの言いたいことは伝わるだろう。

「君の、あの長い黒髪を見詰める目が焼きついて…僕は髪を切ろうと床屋に行くたびに、気が変わって切れなかった…自分でも、変だ、どうしてと…最初は不思議だったよ…。」
「ご免…俺、全然わかってなかった…。」
「わかってなくて当たり前だよ。むしろ、君が僕を女性と間違えたから…ああいうことしたってことは、とても正直な言い分じゃないか。僕に変な期待を持たせない。むしろ誠実だ。」

アキラは、ここまで来たら恐いものはないような気がした。
ヒカルが自分との口付けを間違いだったと言い、髪を伸ばしている事実まで認めてしまった以上、失うものはもうない。

「ご免と言うべきは、本当は僕の方だな。言わなくて済むならきっと言わなかったと思うけど…気持ち悪いよな、君の言葉が気になって伸ばしたなんて知ったら…。」

明日、切って来るよ…丸刈りにはしないから、それは安心してくれ。

アキラは微笑みさえ浮かべ、立ち上がろうとした。
…したけれど、出来なかった。その手をヒカルに掴まれ、引き留められたのだ。

「し…えっ?…何…。」
「謝るのはやっぱり俺だ。なーんもわかってなかった。ずっとずっと気になってたのに、訊く勇気もなけりゃ…お前にコクることも出来ねえの…おまけにあんなヒデエことまで言っちまうし………はっ!なっさけねえやっ!」

手首を一層強く、握られた。
アキラは、今度こそ言葉も出せずにヒカルを見詰める。ヒカルも、真剣な顔つきでアキラを見ていた。唇が噛み締められている。

…進藤?

「さっきのは本心じゃねえよ。確かに酔ってた。頭、回ってなかった。お前にキスした時は夢ん中みたいで…したくてしたくて、我慢出来なかったんだ…でも意識がはっきりしたらさ、お前にどう思われるかって急に恐くなっちゃって…何とか誤魔化さなきゃって…必死こいた末に出た言葉がアレだよ…。」



…そんなナゲエ髪してっから!―――女と間違うじゃんかっ!



アキラの脳裏に、さきほどのヒカルの言葉と、表情と、その時の空気までが蘇る。それは生々しい刃(やいば)となり、アキラの胸を再び刺した。

「俺、駄目だなぁ…どうしてこんなにチキンなんだ…お前のその長い髪、スゲエ綺麗だって…誰かに似ているとか影を重ねてるとか、全然そんなんじゃねーんだよ。本当に、お前がお前だから惹かれるってこと…どうしても言えなかった…。」

今日だってやっとお前に会えるって…前の日から眠れないほど嬉しくて、ちょっとの酒でも酔っちゃったよ…というヒカルの言葉に、アキラも次第にその重みが沁み入るように理解出来た。

「進藤…じゃあ僕は…どうすればいい…。」

疑問形ではあったが、アキラの口調には迷いが感じられなかった。

「切らないで。そのままでいて。お前、ロン毛も似合う。めちゃくちゃイイ。ゾクゾクするくらい、綺麗…俺のために、切らないでくれる?」
「うん…いいんんだな。」
「いいも何も…俺こそ触っていいか?もっとちゃんと、触りたい…。」

アキラは答えの代わりに、目を閉じて俯く。緊張で、睫毛が細かく震える。
それを見たヒカルは嬉しそうに微笑むと、その髪に唇をつけ、優しいキスを落とした。

「好きなんだ…髪だけじゃねえよ…お前が、好きだ…。」
「僕も…っ!?…っ、っ…―――ックシュッ!」
「わっ!お前、まだ髪、濡れたまんまだった…今も冷たかったのに…ご免っ!風邪引いたら俺のせいだ…ホントーにしょうもねえ…。」

ヒカルが慌ててアキラを抱き締める。抱き締めて、全身を撫で擦るように腕を動かし、アキラを温めようとする。
そんなことをするよりも、さっさと髪を乾かして布団でも被ってしまえばいいことはアキラも十分わかっているのに、ヒカルの精一杯の抱擁が嬉しくて―――たまらなく幸せで―――
濡れ髪をわざとヒカルの頬や首筋にくっつけては、甘えるように囁いた。

「いいんだ…君が本当は誰かの面影を見たとしても…僕は傷つかない…君が目の前の僕を好きだと言うのなら、それだけが大切にしたいことだから…。」



君の全てが好きなんだ。君がどんな過去を、秘密を抱えていても、それもひっくるめて全部。

君を意識するあまり、髪を伸ばそうなんて愚かなことを平気でしてしまうほどに―――



ヒカルもアキラの言葉にひたすら胸を熱くして、もっともっと強くその細い体を抱き締めた。

アキラの思い遣りに感謝しながら、いつか全てを打つ明ける日を再び誓う。…「かもしれない」ではなくて、きっと打ち明けるだろう。



ヒカルはそれからもアキラの髪をこよなく愛し、アキラもその愛情を素直に受け取ったのだった………











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